こんにちは。中山です。
モバイルアプリの UI/UX、いったいどれが正解なんだ?!
よい UI(ユーザインタフェース)デザイン については、これまでずっと膨大な議論が交わされてきました。
ある時点で、これがベストだ、とされていた UI デザインであっても、時代の変化、環境の変化にともなって、その定義は変わっていきます。
なかなか答えが見つけられないでいる、UI デザインの正解。ひょっとしたら、すでに世の中にあふれている工業製品から、そのヒントを得られたりはしないんだろうか?!たとえば、田んぼで活躍するトラクターなどは?!
トラクター。
今回見ていくのは、最新車種ではないですが、割と新しいほうの小型のタイプ。小規模な稲作農家向けの、小さいトラクターです。
果たして、トラクターの UI は、モバイルアプリの UI ガイドラインにも合致した仕様になっているのか?!
今回の記事では、モバイルアプリの UI ガイドラインでよく見かけるような、
- 説明がなくても簡単に操作できるか
- 操作の種類ごとに機能がまとめられているか
- エラー発生時に、安全に、わかりやすく、ユーザに通知できるか
あたりについて、トラクターが、どこまでその機能を備えているのか、という観点で、前編・後編にわたって見ていきたいと思います。
なお今回の記事で紹介するトラクターの仕様については、あくまでも一例です。メーカーや年式、稲作向けかそうでないか、などなど、いろいろ異なるところもあると思いますので、その点はご了承ください。
説明がなくても簡単に操作できるか
これがトラクターの運転席。
運転席には、ハンドルがあって、スピードメーターがあって、燃料計があって、一見、普通の自動車といっしょみたいです。これなら、自動車を運転できる人であれば、誰でも簡単に操作できるかな?
そういえば、エンジンはどうやって始動するんだろうか。
そうそう、やっぱりおんなじようにキーを回して・・・、ん?なんだこの「入」と「始動」の間のクルクルのマークは?
これは実は、「予熱」を表すマークです。今回見たトラクターがディーゼルエンジンということもあり、エンジン始動の前に「予熱」を行う必要があります。
クルクルマークの「予熱」位置でしばらく(5秒程度)待ってから、「始動」する必要があるのです。
これはさすがに、「知らないと操作できない」たぐいの部分かもしれません。
また、もう少し古いタイプのトラクターだと、「予熱」ではなく「グロー」と表記されてたりもします。このへんもわかりづらいかも。
エンジンのかけかたはわかりました。それでは前に進むのは・・・、この右側のペダル?よく見ると2つあるから、右がアクセルで、左がブレーキ?
違います。これはどちらもブレーキです。
このトラクターは、左右のタイヤに対して、別々にブレーキをかけることができるようになっています。
例えば左に旋回するときは、左のブレーキだけをかけることで、非常に小さい半径で曲がることができます。
それではアクセルは、というと、
これ。もうぜんぜんわからん。
説明がなくても簡単に操作できるか → ★★★☆☆
少なくとも、このトラクターについては、ひととおりの操作について、説明が必要になりそうです。
モバイルアプリでは、説明がなくても操作できるインタフェースが良いとされており、特に iOS のアプリなどは、そのとおり実装されていることが多いと思われます。
なかなか現実的には実現が難しいのかもしれませんが、「説明書のいらないトラクター」というのも、今後、若い人たちの農業参入を後押しするためにも、いい方策の一つなんじゃないかなぁと思うんですけど、どうなんでしょうね。
ま、実際には「乗って覚えろ」ということになるんだとは思うんですけど。
操作の種類ごとに機能がまとめられているか
次に、運転席左側を見てみます。このように、
トラクターが「移動する」操作に関するインタフェースがまとめられていました。
よく見ると「主変速」「副変速」とかあってややこしいですけれども、これに関しては、以下のように、「こういうときはこの設定にしろ」という説明がありました。
この部分は、逆に、レバー操作のほうで例えば
「代(しろ)かき」に合わせたら、トラクターのほうで自動的に「主変速を3、副変速を低速」とする
というインタフェースにしたほうが、より農業初心者フレンドリーになるのかなとも思いました。(高級トラクターはそうなってるのかも。)
一方運転席右側は、「耕す」操作に関するインタフェースがまとめられています。
操作の種類ごとに機能がまとめられているか → ★★★★★
この点はほんとうにきれいにまとめられているようです。
機能ごとに操作系が揃っていて、かつ、そのすべてが、簡単に手の届く範囲で操作することができます。
モバイルアプリでいうと、参照の機能と編集の機能のインタフェースがきれいに分離されていて、かつ統一感があり、さらに全部、親指の届く範囲にボタンがある、みたいな感じ。
後編では・・・
ここまで、
- 説明がなくても簡単に操作できるか
- 操作の種類ごとに機能がまとめられているか
という観点でトラクターの UI を確認してみました。
モバイルアプリの UI ガイドライン、という視点からすると、よくできている点もあれば、そうでないところもありました。
後編では、
- エラー発生時に、安全に、わかりやすく、ユーザに通知できるか
という点について確認します。
さらには、モバイルアプリの UI 設計では見落とされがちな、あるメリットも、トラクターの UI から見つけ出すことができました。これについても、後編で言及していきたいと思います。