こんにちは。中山です。
前編に引き続き、トラクターの UI を、モバイルアプリ開発者の視点から、いろいろと探っていきたいと思います。
モバイルアプリとトラクター、何の関連性があるんだ、と思われるかもしれませんが、そのユーザインタフェースの設計思想は、意外なほど、共通点が多いものでした。
エラー発生時に、安全に、わかりやすく、ユーザに通知できるか
前編に引き続いて、モバイルアプリの UI ガイドラインの観点から、トラクターの UI を観察していきます。
前編では、
- 説明がなくても簡単に操作できるか
- 操作の種類ごとに機能がまとめられているか
という点を見ていきました。後編では、
- エラー発生時に、安全に、わかりやすく、ユーザに通知できるか
という点について、まず確認します。
と言っても、これについては、もう当たり前にできているんじゃないかな、と想像していました。
燃料系もついているので、燃料が少なくなってきていることも、すぐ確認できますし、
同じように水温計もあるので、オーバーヒートしそうな状態を事前に察知することもできます。
一方、トラクターで一番「危険」だと思われる部位は、車体後部の「ロータリー」の部分です。
(YANMARサイトより)
田んぼや畑を耕すときは、このロータリー部分を下げて、いくつもついている「刃」を回転させながら移動します。
田んぼ、畑以外の道路を移動するときは、ロータリーを上げて、回転を止めてから移動することになります。
そしたら例えば、ロータリー部分を下ろして回転させたままで、舗装路を進むことはできるのか?
これについては、やっぱり最近のトラクターはよくできていると思いました。
ハンドル横に、こういった切り替えスイッチがあり、「道路を移動するモード」「田畑を耕すモード」を、一発で切り替えられるようになっています。
道路を移動するときは、このスイッチを「走行」に合わせておくと、不要なロータリー回転が起こることもなく、安全に移動できる、ということのようです。
でも、行こうと思えば、ロータリーを回転させたまま、ガリガリと舗装路を進むこともできてしまいます。(しませんけど。)
ひとむかし前のトラクターに比べると、このあたりの安全装備は、目を見張るほど進歩しているようです。
しかしここはあえて、もう一歩、安全面で進歩してほしい!
田んぼとアスファルトの道をセンサーで見分けて、ロータリーの刃のガリガリを防ぐようなことはできないか、また、回転中のロータリーに人が近づいたら、これもセンサーが感知して、回転を停止する、といったことができないか(もう、実現してるのかもしれませんが)。
やっぱり、農業機械による事故というのは、毎年どこかで発生しています。
私の身近な範囲でも、そういった話は耳に入ってきます。
今後一段と高齢化する、農業の担い手、また、これから農業に参入する若い人々。そのいずれもが安心して作業できるような仕組みができあがることを、願ってやみません。
エラー発生時に、安全に、わかりやすく、ユーザに通知できるか → ★★★★☆
安全面での進歩は目覚ましいものがありました。
しかし、あえて、より安全を目指す方向にシフトしてほしい、という願いをこめて、星4つ。
しかしモバイルアプリには無い、良いところ
前編・後編に渡って、モバイルアプリの UI ガイドラインと照らし合わせながら、トラクターの UI をいろいろな角度から眺めてきました。良いところもあれば、もう少し頑張ってほしい、と思うようなところもありました。
しかし、多くのモバイルアプリには無くて、トラクターのユーザインタフェースにあるもの、というのにひとつ気がつきました。
それは、操作の上達による、満足度の向上です。
だんだん操作になれてきて、複雑な装置の操作を思い通りに動かせるようになると、ある種の楽しさ・面白さが出てきます。
モバイルアプリの設計の観点から見ると、UI はシンプルであればあるほどよい、となりそうです。
しかしこういったトラクターなどは、あえて複雑さを残すことで、「使いこなす楽しさ」を得られるような設計になってるのか、とも思うくらい。(たぶん違うと思うんですが、そう思ってしまうような何かがあります。)
確かに、以前よりも機能が増えてきて、操作系が複雑化している、という面はあるとは思いますが、それでもなお、「操作する楽しさ」というのが、トラクターに備わっているのかなと思いました。
モバイルアプリにも、こういった「手に馴染む感じ」を演出する、という考え方、ちょっと取り入れていってもいいのではないか、と思いました。
まとめ
モバイルアプリのUI、トラクターのUI、アプローチの方法は異なるかもしれませんが、どちらもやはり、使う人を最優先に考えたものになっています。
スマートフォンだけを眺めていたのでは見えてこない、何かがあるのかなぁ、と思わされました。